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 地域資源紹介

はけの道と湧水

はけの道と湧水

■指定されている場所:小金井市

小金井市の中のJR中央線の南側、野川の北側には高低差が15~20mの崖(がけ)ないしは急な斜面が東西に走っています。この崖のことを、武蔵野地方の方言で「はけ」といいます。JR「武蔵小金井駅」南口より徒歩7分のところにある「金蔵院(こんぞういん)」の前から、野川と西武多摩川線が交差する付近にある「二枚橋」までの、はけの下を東西に伸びた約2kmの道のことを「はけの道」といいます。はけの道と崖の上の道との間には風情ある坂や階段が幾つも走っており、その周囲には古い民家も残り、武蔵野の雑木林が広がる自然豊かな景観となっています。

はけの道と湧水

またはけの下には清らかないくつもの湧水が流れ出し、小さな水路を作っています。はけの道は、「水と緑の小金井」を実感することのできる、散歩やサイクリングに最適な整備された遊歩道です。

『武蔵野夫人』の舞台

はけの道は、大岡昇平の恋愛小説『武蔵野夫人』(1950年発表)の舞台となった土地です。この小説の冒頭は、

 土地の人はなぜそこが「はけ」と呼ばれるかを知らない。「はけ」の荻野長作といえば、この辺の農家に多い荻野姓の中でも、一段と古い家とされているが、人々は単にその長作の家のある高みが「はけ」なのだと思っている。中央国分寺駅と小金井駅の中間、線路から平坦な畠中の道を二丁南へ行くと、道は突然下りとなる。野川と呼ばれる一つの小川の流域がそこに開けているが、流れの細い割に斜面の高いのは、これがかつて古い地質時代に関東山地から流出して、北は入間川、荒川、東は東京湾、南は現在の多摩川で限られた広い武蔵野台地を沈殿させた古代多摩川が、次第に西南に移って行った後で、斜面はその途中作った最も古い段丘の一つだからである。

となっており、実に正確にはけの歴史について説明しています。

はけの道と地層

はけの道と湧水

「はけ」と呼ばれるこの崖は、地質学的には「国分寺崖線(がいせん)」といい、立川から世田谷にまで達しており、約30kmにも及びます。小金井に見られる崖地もこの国分寺崖線の一部です。国分寺崖線は、太古の昔、古多摩川(こたまがわ)が武蔵野台地を長い時間をかけて侵食することによって生まれました(古多摩川の流路は、今では関東ローム層の下に埋まっています)。地表面の薄い表土層の下には、富士山の火山灰が堆積した、水を透過しやすい赤土の「関東ローム層」があり、その下にはかつての川原石が積もった「武蔵野礫層(れきそう)」があります。その下に水を通しにくい「東京層」の粘土層があるために、石が大きく隙間ができやすい武蔵野礫層には地下水がたまり、これが国分寺崖線の下の湧出として地上に湧き出ます。江戸時代は、はけの湧水を生活用水や農業用水として用い、よく水で潤された森からは、薪(たきぎ)を豊富に得ることができました。はけは、昔の人々の生活には欠かせない存在でした。

金蔵院・小金井小次郎の墓・数々の坂

はけの道を歩いていると、次のようなスポットがあります。
「金蔵院(こんぞういん)」は、はけのすぐ下に位置し、白萩(しらはぎ)が植えられているため「萩寺」とも呼ばれています。樹齢400年を越すケヤキとムクノキがあります。

「小金井小次郎」の墓が、金蔵院の近くの西念寺の墓地にあります。小次郎は小金井の名主の子で、新門辰五郎(しんもんたつごろう)の弟分となり、後に子分が3000人を数える大親分となりました。三宅島に流刑にされた際、島の水不足を救うため尽力しました。墓碑銘は山岡鉄舟の筆になります。

「小金井神社」は菅原道真を祀った神社です。境内には国内でも珍しい石臼塚があります。

「妙歓坂(みょうかんざか)」は、かつての農道で、「妙歓」という名の尼僧が住んでいたことから名付けられました。

「車屋(くるまや)の坂」には、かつて2台の水車があったことにちなみます。西側には、豊かな自然も残っており風情があります。

「白伝坊(はくでんぼう)の坂」は、坂の中腹の西側にある墓地に「白伝」という托鉢僧が住んでいたことにちなんでいます。

はけの道と湧水

はけの道と湧水
美術の森緑地の湧水

「おお坂」は、江戸時代、国分寺へ通じる「薬師道」の起点となった場所です。この坂の途中に、市立はけの森美術館(旧中村美術館)の庭園に入る藁葺きの門があります。はけの森美術館は、洋画家・中村研一の自宅兼アトリエの敷地にできた美術館です。旧宅を改装して造られたカフェもあります。美術館の庭園は「美術の森緑地」と呼ばれ、緑地内の湧水は東京の名湧水57選に選ばれています。湧水は年間の水温の変化が少ないため、季節によって冷たく感じたり、暖かく感じたりします。「美術の森緑地」の他にも、小金井市内では「貫井神社」「滄浪泉園(そうろうせんえん)」が東京の名湧水57選に入っています。

はけ の小路
はけ の小路

「はけの小路」には、「美術の森緑地」の湧水から流れ出た小川に沿って遊歩道が設けられています。途中小川は暗渠(あんきょ)になって地表からは見えなくなりますが、最後には野川に注いでいます。この小路は、ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』の舞台になったことで知られています。

ムジナ坂
ムジナ坂

「ムジナ坂」は、階段坂に整備されたかつての農道で、暗くなってからこの坂を通ると、ムジナ(タヌキやアナグマのこと)に化かされるという噂から、人々は怖がって夜は遠回りをしてこの道を避けたといいます。

武蔵野公園
武蔵野公園

「都立武蔵野公園」は、野川沿いに広がる自然いっぱいの公園です。公園にはバーベキュー広場や小高い「くじら山」、「どじょう池」、さらには公園や街路用の樹木の苗を育てるための「苗圃(びょうほ)」があります。隣接して「都立野川公園」があります。野川は恋ケ窪を水源とし、はけの湧水を少しずつ集めて、世田谷区の二子橋付近で多摩川に合流している川です。

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